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おしゃべり散歩道2013

女・宮本武蔵

 横浜港を臨む山下公園の氷川丸の汽笛と共に、第5回横浜国際女子マラソンがスタート。黄色いユニフォームの選手が多く、街路樹の銀杏に溶け込むようでした。私は移動中継車から解説を。美しい女性の舞台で日本人トップになったのは、野尻あずささん(31)です。20キロでペースメーカーが外れた後、那須川瑞穂さん(33)と二人で先頭争いをし、25キロ付近で那須川さんを引き離して独走に。28キロ付近で追い上げてきたアルビナ・マヨロワさん(ロシア)に抜かれたものの、2位でゴールイン。
 「第一生命の頃、山下佐知子監督にマラソンを教えて頂いたおかげです」レース後、開口一番に野尻さんは話しました。昨年3月まで第一生命に所属し、それからは故郷の富山を拠点に一人で練習を行っています。長距離走に挑む時はお母さんが車で伴走し、給水を渡してくれることも。でも一人でやるのは大変でしょう?と私が尋ねると「走ることが大好きなので」と笑顔の野尻さん。
 そんな彼女の走る原点は子どもの頃にあるようです。「立山の麓にあるおばあちゃんの家まで3.3km走ってよく遊びに行きました。至る所に湧水があって田園風を景眺めながら走るうちに楽しくなりました」と。だから、無謀とも思われる練習に挑戦出来るのだと思います。ある日の練習は朝6時に家を出て、夕方6時まで12時間走り続けるもの。100km以上を走ったそうです。また標高2500mの室堂平に籠り、登山道を走りまわる日々も。「立山で練習していると、何か力を貰えている気がして」と話します。野性を呼び起こすような環境で修業とも言える練習を積む“女・宮本武蔵”、野尻さんの今後の活躍が楽しみです。  

(共同通信/2013年11月18日配信)

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