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おしゃべり散歩道2013

お疲れさま、佐藤さん

 男子マラソンの聖地といわれる福岡国際マラソンは今年で67回の歴史を重ねました。12月1日、そこで現役生活に静かに別れを告げた選手がいます。佐藤敦之さん(35歳・中国電力)。川内優輝さんと藤原新さんの対決が注目される中、佐藤さんはスタート前に少しテレビに映っただけですが、私はずっと応援していました。
 彼は2000年代の男子マラソン界をエースとして支えた人です。ハーフマラソンの日本記録1時間0分25秒はまだ破られていません。私は佐藤さんと話をするたびに自分の襟を正したくなるのです。立ち姿が美しく、誠実な話し方で、それは生まれ育った環境にあると感じます。以前、子どもの頃のことを尋ねると「僕は会津の生まれで、実家の柱には野口英世の格言が書かれています。暗記していますよ」と話してくれました。また「祖父から会津藩の什の掟を叩きこ込まれました」とにっこり。
 忘れられないのは、佐藤さんが北京五輪に出場し、脚の故障から最下位でゴールした時のことです。スタジアムの8万人の観衆に拍手で迎えられ、ゴール後、スタンドの四方に深々とお辞儀をしました。私だったら恥ずかしくてお辞儀も忘れて、走り去ってしまったと思います。後日、中国で佐藤さんの礼儀正しさが話題になったと日本の外務省の方から伺いました。そして翌年、ベルリン世界選手権に出場し、見事6位入賞を果たしたのです。
 ラストランの福岡は2時間33分0秒、清々しい表情でゴールイン。
 佐藤さん、お疲れ様でした。これから奥さまの美保さん(旧姓:杉森、800m日本記録保持者)と共に「五輪でメダルを獲る選手を育てたい」という目標に向かってがんばってくださいね。

(共同通信/2013年12月2日配信)

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