自ら錬磨、心で走る
6月下旬、岐阜の御嶽山で合宿するヤマダ電機女子陸上部を取材に。11人の選手が宿泊するロッジは標高1800mにあり、色とりどりの高山植物の花が咲いていました。「朝、山の遊歩道を散歩していたら熊の親子がいたので、後ろからそぉーっと歩きました」と監督の森川賢一さん。いつもお話しが面白い人です。選手たちも大自然の中でジョギングしていると、時々鹿や猿に会うそうです。
6月上旬に行われた日本選手権では女子1万mで教え子の西原加純さんが優勝、2位が竹地志帆さんとヤマダ電機は1、2フィニッシュを達成。でも練習量は決して多くありません。この日は朝、全員で8kmのジョギング。午後の本練習の8000m、2000m、1000mのペース走もそれほど速くありません。「うちの練習はよそと比べると緩いでしょう。無理をさせないんですよ」と森川さんは笑います。練習がもの足りない位の方が、試合で力を爆発させられるというのが、長年の指導で分かったことのようです。
ただ驚いたのは、選手たちは朝、昼、夕食の後、必ず20分から30分の散歩に出かけていることです。消化を良くし、体調を整えることを心掛けています。また朝食の後、近くの「濁河スポーツセンター」へ行き、自主的に体軸を鍛える練習を。そして、ロッジの濁河温泉は24時間いつでも入れますが、脱衣場には小説や歴史書が何冊も。ゆっくり半身浴をしながら読むためです。
合宿生活に触れて、選手一人一人が自分を磨き、強くなることに集中しているなと感じました。それは体の中心(体軸)がぶれない走りにも表われていて、集団で走っていて美しいのです。心で走るチームだと感じます。
(共同通信/2014年6月23日配信)
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