観客との一体感が力に
水彩画のような羊雲が青空に浮かんだ10月10日、山口市の維新百年記念公園陸上競技場へ。その日から3日間に渡り全日本実業団対抗陸上競技選手権大会が開催されたのです。レンタカーで会場へ向かうと、競技場の周辺が大渋滞。2020年の東京五輪・パラリンピックが決まった影響かと嬉しく思っていたら、その車の列は隣の多目的広場へ。地元テレビ局主催のグルメイベントが行われていたのです。
ただ競技場も負けてはいませんでした。メインスタンドはほぼ満席。主催者が観客を増やすために様々な工夫を凝らしていました。お楽しみ抽選会で様々な企業が賞品を提供し、パソコンなどが当たると大きな拍手が起きたのです。また初日午後6時スタートの男女の10000mは観客がグラウンドまで降りられました。トラックの中ほどまで近づくことが出来て、選手が目の前を通って行く臨場感を味わえます。子ども達はそのスピードに目を丸くしていましたが、監督達の大きな声にもびっくりしている様子。「アホか、ここで粘るんだよ」「前を追えるぞ」「いける、いける」等々その発破の掛け方が凄いのです。
そんな中、女子はチェピエゴさん(九電工)が優勝し、アジア大会10000mで銅メダルに輝いた萩原歩美さん(ユニクロ)が積極的について行き自己ベストタイムで2位に。最終日の女子5000mもチェピエゴさんが優勝し、日本人トップで2位に入ったのが、日本郵政グループの鈴木亜由子さん。トップと0.5秒差の15分14秒96は自己ベストを10秒以上更新する好タイムでした。亜由子さんのように自己ベストを出す選手が多かったのは、観客との一体感が生み出す力も追い風になったのだと思います。
(共同通信/2014年10月20日配信)
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