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おしゃべり散歩道2015

リオ五輪目指す前田さん

 虫の音についつい歩く速さが遅くなります。北京世界陸上選手権を終えた前田彩里さん(女子マラソン13位)も今は休養中。熊本の実家に帰り、スーパー市民ランナーであるお母さんの淳子さんと共にジョギングしたり、友達と遊びに行ったり。のんびりとした日々を過ごしているようです。
 彩里さんは大きな期待を背負って走りました。大学時代に走った大阪国際女子マラソンで2時間26分46秒の大学新記録で華々しくデビュー。その後は名門ダイハツ進み、林清司監督の下でめきめきと力をつけ、2戦目の名古屋ウィメンズでは日本人トップの3位。2時間22分48秒の好タイムで北京の切符を手にしたのです。そしてわずか3戦目が世界の大舞台。大会前はスイス・サンモリッツでの長期合宿、直前は北海道・士別市で合宿。若干23歳の彼女は長い時間をかけて準備し、世界の初舞台に挑みました。
 ご両親ともに実業団ランナーだったこともあり、マスコミの注目の的に。彩里さんがオリンピックに行くことを楽しみにしていたお父さんが一昨年亡くなり、ドラマチックにメディアは取り上げました。天真爛漫な彩里さんですが、相当なプレッシャーがあったと思います。大会前に淳子さんが「町役場に横断幕が掲げられたよ」と電話で話すと、「そんなこと私に言わないで」と電話を切ったそうです。また合宿中は原因不明の腹痛に悩まされることも。
 今、「世界陸上で上手くいかなくて良かった」と彩里さんは話します。その目は何かを掴んだようです。自分の弱さも、大舞台で力を発揮するために何が必要かも感じとった様子。来年のリオ五輪に向けて、北京は彩里さんの良いリハーサルになったのだと思います。

(共同通信/2015年9月7日配信)

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