伊藤選手 謙虚さ強み
金木犀のほのかな香り漂う長良川では散歩やジョギングをする人の姿が多く見られました。9月25日から27日まで全日本実業団陸上競技選手権が岐阜市の長良川陸上競技場で開催され、競技の合間に北京世界陸上選手権の入賞者の表彰が行われたのです。1か月ぶりにお会いした男子競歩の谷井孝行さんと荒井広宙さん(共に自衛隊体育学校)、女子マラソンの伊藤舞さん(大塚製薬)の爽やかな笑顔が印象的でした。
来年のリオデジャネイロ五輪に向けて、女子マラソンで真っ先に代表の切符をつかんだ伊藤さんは喜び勇んでいるかと思ったら、そうではありません。「舞ちゃんなのに、全然舞い上がっていないね」と私が言うと、「素質がない私にはあと1年でやらなきゃいけないことだらけで、責任を感じます」と話すのでした。
子どもの頃は跳び箱もマット運動も出来なかったそうです。「でも一生懸命練習すれば成果が出るのがマラソンだった」と伊藤さん。監督の河野匡さんと巡り会ったことで良い練習の継続が出来、今回11回目のマラソンで「少し納得のいく結果を出せたかな」と。と言うのも、前半よりも後半のタイムが良かったのは初めてだったからです。ただ課題は、「30km以降の強さです」と。北京では33km地点でアフリカ勢を中心に6人の選手がペースを上げた時に付いて行くことが出来ませんでした。それは日本の女子マラソン界の課題でもあるのです。
でも伊藤さんはこの一年で取り組みたいことが明確です。「動きを改善したい。一歩一歩の接地の負担を少なくする走りを身につけて30kmまで力を温存したい」と。自分は力がないと思える謙虚さが伊藤さんの強さでしょう。リオ五輪が楽しみ。
(共同通信/2015年9月28日配信)
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