食生活改善大きな力に
大阪城の梅園では香篆(こうてん)という梅が花を咲かせ、春の香りを漂わせていました。1月31日に開催された大阪国際女子マラソンで大きな花を咲かせたのは福士加代子さん。ゴールまで2キロほどの地点で福士さんの勝利を確信した私は、不覚にも移動継車の中で涙を抑えきれませんでした。マラソンの荒波にもまれてきた日々が蘇ったからです。
初マラソンは後半に全身痙攣で何度も倒れ込みながら完走。4年前のロンドン五輪選考レースでも後半失速し、その後は骨折した足の手術など、たくさんの困難を乗り越えてきました。そんな福士さんのことを知っている沿道から、声援の波が次々に押し寄せてきたのです。「ようやった」「福士、オリンピックいけるで」「リオや、リオや」。皆、思いは一緒でした。
監督の永山忠幸さんはスタート前に「福士が笑顔でゴールできたら、勝因は食事です」と話しました。確かに、大会前日の朝、ホテルのレストレンで食事する福士さんを見ると、ドンブリに山盛りのごはんを1時間近くかけて食べていたのです。その後に弁当箱サイズのカステラをパクパク。栄養士の澤野千春さんに伺うと「チームの後輩だった阪田直子さんの嫁ぎ先、滋賀県の老舗の和菓子屋・正栄堂からの差し入れです」と。
ゴール後に福士さんは「今朝もこんなに食べていいのかと思うくらい食べましたよ。まだお腹いっぱいです」と笑い、「この4年間走れる体を作るために食生活の改善に取り組みました。練習より辛かったかも。澤野栄養士のおかげです」と嬉しそうでした。
8回目のマラソンで、準備期間も含めて「マラソンを奏でる」感覚をつかんだと言う福士さんの次の舞台が楽しみです。
(共同通信/2016年2月1日配信)
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