障害者スポーツの場を
3月下旬、新しく出来た体育館で車椅子バスケットの練習がしたいのに「床に傷がつくから」と都内の自治体が利用を断ったという記事が東京新聞に掲載されました。体育館は運動することが目的ですから、これでは本末転倒。その後、東京都のスポーツ関係の会議でもこのことが話題となり、ご一緒した大日方邦子さん(アルペンチェアスキー金メダリスト)が「体育館は傷がつくものです。意識を変えなくてはいけません」と、ピシャリ。おっしゃる通りだと思いました。
この一連の出来事で思い出したのは、昨年4月に完成したばかりの函館アリーナ。見学に伺いましたが、視覚障害者の島信一朗さん(函館視覚障害者福祉協議会理事長)らの意見を取り入れて、サブアリーナ2階の走路に手すりがあることや、通路が車椅子やベビーカーも乗り越えやすいゴム製の点字ブロックだったことに驚きました。障害者の視点を大切に、妊婦さんや高齢者にも優しい作りになっていたからです。
そこで、電話で函館アリーナの館長さんにお話しを伺うと、まだ車椅子バスケやウィルチェアラグビーなどを行いたいという申し込みはないそうです。でも、あっても「当初から車椅子スポーツに対応できる床材を採用しています」と。島さんにもお話しを伺うと、「東京都のことは障害者スポーツへの理解の不足ですが、全国的にみればこれが現実だと思いますよ」と。そして、4月1日から障害者差別解消法が施行されたからいって、「障害者が権利ばかりを主張してはいけない」と島さん。「障害者と健常者が一緒に考えていくことで開かれた環境になる」と話ました。東京都のこの件も、共に考えるきっかけになっていくでしょう。
(共同通信/2016年4月4日配信)
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