控えたい安易な鉄剤注射
葉桜の緑明るい4月10日、日本陸上競技連盟主催の栄養セミナーが味の素ナショナルトレーニングセンターで開催されました。テーマは「貧血」。会場には栄養士の方々や現場の指導者、マスコミなどが集い、120人が入る会議室は椅子が足りなくなるほどの大盛況でした。冒頭、尾縣貢専務理事が「鉄剤の静脈注射の問題が若いアスリートの芽を摘み取っている。これまでは目をつむってきたが、今日を取組みのスタートにしたい」と。挨拶には気迫がこもっていました。だからこそ食事からしっかり栄養を取る“食べるアスリート”を育てて欲しいと強調したのです。
日本陸連医事委員長の山澤文裕さんが貧血の治療法などを説明しましたが、「人は過剰に摂取した鉄を排泄するメカニズムを持っていないので、安易な鉄剤注射は強い酸化ストレスを引き起こし、様々な疾患の原因になる」と警鐘を鳴らしました。
その後行われたシンポジウムでは陸上の現場から、第一生命女子陸上部監督の山下佐知子さん、2年前に現役を引退した赤羽有紀子さんと私の3人が登壇。赤羽さんはご主人の周平さんが作る食事のおかげで「貧血も克服でき、ケガも少なくなった」と。山下さんは「実業団はトップ選手を作る場であって、再生工場ではない。」と話した後、「高校駅伝の入賞者の血液検査をしてみてはどうか」と提言されました。私も大賛成。ドーピング問題への意識付けや健康指導に活かすために、インターハイの選手たちにも行って欲しいと思います。
セミナーの最後に「アスリートの貧血対処7か条」が配布され、「安易な鉄剤注射は体調悪化の元」と明記されました。新しい取り組みの号砲が鳴った、春の日でした。
(共同通信/2016年4月11日配信)
|