故郷に錦を飾る
母の日に行われた仙台国際ハーフマラソン。芽吹く若葉の躍動感に同調するような走りで優勝のゴールテープを切ったのは、今井正人さん(32歳・トヨタ自動車九州)です。気温22℃、風も強い中で1時間03分6秒の素晴らしい記録。福島県南相馬市出身の今井さんはゴール後に「東北、仙台で一歩を踏み出せたことが嬉しいです」と。武士のようにキリッとした表情を緩めて話しました。
今年2月には、リオデジャネイロ五輪の選考レースだった東京マラソンに挑みましたが、あと一歩で届かず。でも体の疲労を抜いた後、気持ちを切り変えて次の目標を来年のロンドン世界陸上競技選手権に定めたのです。今回がその皮切り。「勝負感を取り戻すことが目標」とレース前に話した通り、先行していたチェボティビン・エゼキエルさん(東邦リファイン)に谷川智浩さん(コニカミノルタ)と共に10km過ぎで追いつき、19kmの最後の上り坂で谷川さんをかわして、そのままゴールへ。上り坂で勝負する所が、さすが元祖・山の神だと思いました。
実は今井さん、この日のゴールとなった仙台市陸上競技場には思い出があります。原町高校三年生の時にインターハイの東北地区予選が行われ、晴れ舞台となったのです。同じ舞台で一歩を踏み出せたことが相当嬉しかったようです。そして「あと10年走る、そんな歴史を自分が作っていきたい」と話しました。これまで髄膜炎を煩うなど様々な困難を乗り越えてきましたが、マラソンでとことん自分を極めたいという強い意志が感じられます。今井さんは家族をとても大切にしています。福岡のご自宅で見守った、奥さまの麻美さんも秀馬君、悠人君に最高の母の日の贈り物になりました。
(共同通信/2016年5月9日配信)
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