世界最大のラン
滋賀県の高島市といえば、陽明学者中江藤樹さんの故郷としても有名ですが、そこで5月上旬にワールドランが開催されました。この大会はレッドブル日本法人の主催で、参加費の全額が脊髄損傷治療の研究に寄付される「走れない人のために走る」というテーマを掲げています。
面白いのは、世界34か所で13万734人が世界標準時の11時に同時にスタート。私は国際映像を観ながら解説しましたが、日本では夜8時にLEDライトをつけた1630人のランナーがびわ湖を照らし、その波は天の川のようでした。ドバイでは砂漠の中を、カナダではナイアガラの滝の眺めながら、風景がそれぞれに特徴的なのです。
またルールも変わっていて、子どもの頃の鬼ごっこを思い出します。スタートから30分後にキャッチャーカーと呼ばれる車が走り出し、これがゴールライン。後ろから追いかけてくる車に抜かれたらゴールです。ただ車は徐々にスピードを上げるので、ランナーがフルマラソンの距離まで走るためには、3時間ほどで走り切れる健脚が求められます。
そんな中、「チャリティの趣旨に賛同しました」と言って参加した吉田香織さん(2015さいたま国際マラソン・日本人1位)が、世界のトップを走り続ける姿に感動しました。ライバル達が50kmを過ぎて失速したり、道路の横に座り込んだりする中、彼女は凛としたフォームで65.71kmを走りきって優勝。フルマラソンの練習でも50km走が最長だったようで、「途中、お腹がすいてしょうがなかったです」と話しました。そして「本当は70kmまで行きたかったけど、自分の出来ることで役に立てることが嬉しいです」と、にっこり。彼女の人柄の勝利だと思います。
(共同通信/2016年5月30日配信)
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