平成の師弟愛
7月中旬、リオデジャネイロ五輪へ向けて長野県菅平・峰の原高原で合宿中の田中智美さん(女子マラソン)を取材に。上田駅から車で向かう途中の旧真田町は、大河ドラマで話題の郷。幟旗や看板に「真田」が多く、ドラマの風景と重なってウキウキしました。
標高1500mに位置する芝生のクロスカントリーコースに着くと、田中智美さんの姿が。体が引き締まり、そのために太ももの筋肉が目立ちます。「順調?」と私が聞くと、「ハイ、調子はとてもいいです」と田中さん。本番を待ちきれない様子でした。監督の山下佐知子さんは「短期間でどんどん成長しているところがスゴイですね」と。田中さんは優勝した横浜国際女子マラソンから今年3月の名古屋ウィメンズマラソンまで、1年半で自己ベストを約3分更新。そして名古屋からリオを目指す半年で、「更に強くなっていますよ」と山下さん。
この日は午前中に1kmのインターバルトレーニングを10本行い、午後は芝生の上で70分のジョギング。草の香りが漂う広々とした風景の中、黒光りした田中さんの走りはキレがあって、アフリカの選手のようでした。動きをみて私もワクワクしました。すると隣でトレ―ナの酒匂寛さんが「監督と田中さんは、表彰台を狙っていますよ」とこっそり教えてくれたのです。
田中さんの強さは、“師弟愛”が力になっていることでしょう。山下さんについて聞くと、「一言で、大好きですね。監督が命がけで指導して下さるので、私は良い結果を出して監督を喜ばせたい」と。そして山下さんも田中さんのひたむきさ好きで、心から信頼しています。自立した大人同士の「平成の師弟愛」がきっと結果につながると思います。
(共同通信/2016年7月15日配信)
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