根性で「書く旅」も完走
作家の角田光代さんは趣味でマラソンを走っています。昨年末に一緒にお食事をした時、スポーツ談義に花が咲きました。一見スポーツとは無縁に見える角田さんですが、定期的にボクシングジムにも通っています。「昔、失恋したことがきっかけで、もっと心を強くしたいと思って始めたんです」と角田さん。とは言っても相手と打ち合うボクシングではなく、一人でサンドバッグやパンチングボールに向かうとのこと。「何も考えない時間をもてるのがいいですね」と話します。
「増田さんは勝負するのが好きでしょ。」と言うので「そうねぇ、負けず嫌いだと思う」と言うと、「私は相手に勝ちたいという気持ちが無さ過ぎなんです」と角田さんは笑います。だから自分とだけ戦うマラソンが合っているのかもしれません。
毎年12月にNAHAマラソンに参加しています。今回はご主人も一緒に。角田さんは練習不足により5時間台でのゴール。(自己ベストは4時間26分16秒)ご主人は残念ながら34キロで制限時間をオーバーしてしまったとのこと。
角田さんの著書には、対岸の彼女、八日目の蝉、紙の月、坂の途中の家、等々話題となってテレビドラマ化されるものばかりです。才能と根性がなければ「書く旅」のゴールに辿り着けないはずなのに「気持ちを強くしたい」とスポーツに向き合うところがステキ。また直木賞作家の凄い方なのに、驚くほど普通なのです。NAHAマラソンでは地元のテレビ局に「どちらから来ました?」「職業は?」とマイクを向けられてしまうほど。だから多くの人に愛されるのでしょう。昨秋、「なんでわざわざ中年体育」(文芸春秋)を出版されました。これもすっごく面白いです。
(共同通信/2017年1月16日配信)
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