地方に根付くスポーツ文化
梅雨空を丸い顔の紫陽花が彩った6月中旬、関西大学梅田キャンパスで「スポーツと地域と人づくりと」と題したシンポジウムが。そこで、アルビレックス新潟の中野幸夫社長のご講演を聴けたことは幸運でした。今、チームはJ1で最下位。中野さんは「強い時、観客席は満員。でも今は半分の2万人ですよ」と、包み隠さず話します。「弱くてもサポーターは一生懸命です」と。地元の新聞には、人生に喜びを与えてくれたアルビ(チーム名の略)を今こそスタジアムで応援しようという高齢者の声や、「応援してスッキリしたほうが勉強にも集中できる」と受験生が受験生に呼びかける声などを紹介。本当に地域が皆でチームを自分事のように思っているなと感動しました。
家族全員がアルビのオレンジ色のユニフォーム姿で応援する写真を見ながら、私は米国にいた頃を思い出しました。週末、ホームステイ先ではお弁当を作って「アケミ、行くわよ」とアメフトの試合を観に。いつもスタジアムは遠足気分で観戦する人がいっぱい。米国のようなスポーツ文化が新潟にあると感じます。
今年5月に呂比須ワグナー監督が就任。「チームの雰囲気が一変しました」と中野さん。試合前、スタジアムにバスで来る選手たちを「入り待ち」するサポーターたちは、応援メッセージを書いた紙を掲げたり、選手の名前を呼んだり。しかしバスの中では、カーテンを閉めたまま、イヤホンで音楽を聴いている選手も。監督は怒り「今、君たちが聴くのは音楽ではない。このサポーター達の声だ。カーテンを開け、イヤホンをとり、アイコンタクトをとりなさい」と諭したそうです。新潟の大家族の応援が必ずチームを強くするでしょう。
(共同通信/2017年6月19日配信)
|