故障乗り越え力走
神宿る島、宗像・沖ノ島とその関連遺産群が夏に世界文化遺産に登録されました。10月22日、その話題の地でプリンセス駅伝(「クイーンズ駅伝」全日本実業団女子駅伝の予選会)が開催。台風21号が近づいていたこともあり、スタート時から強い風で木々が歌うように揺れていました。そんな過酷な中で優勝したのは、豊田自動織機。昨年のクイーンズ駅伝は、1区と2区の襷渡しでオーバーゾーンとなり失格。涙をのみ、その雪辱を果たす感動的な優勝でした。
そして、5区で区間賞に輝いた前田彩里さん(ダイハツ)の走りは、正に「疾風に勁草を知る」もの。前田さんは、2015年の名古屋ウィメンズを2時間22分48秒の好タイムで走り、日本人トップに。23歳のシンデレラガールと呼ばれ、北京世界陸上に出場。リオ五輪も期待されましたが、左足を故障し手術。約2年間レースから遠ざかっていました。「ケガをさせるなんて僕の責任だ。何としても復活させる」と林清司監督が辛そうに話していたのを思い出します。前田さんは父親のように優しい監督に見守られるなか、苦しいリハビリに取り組み、走れない日々を腐ることなく乗り越えたのです。お母さん淳子さんも「市民ランナーの私だって一か月走れないとイライラするのに、彩里はよくがんばっている」と涙をためて話していたほど。
この日、前田さんは故障前よりも絞れた体で、髪の毛をキュっとまとめ、神々しさを感じるような出で立ちでした。レース中は、強い向かい風にずっと前傾姿勢で挑み、最後は笑顔で襷渡し。道の最高神でもある三女神を祀っている宗像大社。縁起にいい場所で、前田さんが2020年に向けて第一歩を踏み出しました。
(共同通信/2017年10月23日配信)
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