春の被災地を走る
東日本大震災から7年。被災地では少しずつ復興が進んでいます。南相馬市の小高区は2016年夏に避難解除されましたが、故郷に戻った人は2割強。隣町の浪江町は避難解除から1年。約2万人の人口のうち、およそ500人が戻ってきています。そんな復興途中の地域を手作りの駅伝で応援しようと、3月31日、南相馬市北部の鹿島区から南下し、原町区、小高区、浪江町まで約30kmを駅伝形式で走りました。約70人の参加者は地元の人に加え、千葉や茨城、東京等から。私も皆さんと、交通規制なしの歩道を足の裏で復旧の様子を確かめながらゆっくり走りました。
スタート地点の鹿島区から海の方を見ると、大きな風車が4基。間もなく稼働するそうです。応援に来てくれた作家の柳美里さんは、「あの辺りに家を建ててはいけなくなった。だから風車が動いているのがいい」と。柳さんは6年前に神奈川県から南相馬市原町地区に引っ越し、昨年には小高区へ転居。「本は別世界への扉。書店を通じてその扉を開くために手助けしたい」4月9日に小高駅近くに住民や生徒が集える書店をオープンする予定です。
走りながら目にしたのは、雨戸やカーテンが閉まったままの家が多い中、時より魚を焼く匂いで生活感を感じる家も。でもそんなのお構いなしに、桜が見事に咲きほこり、道端には水仙の花が歌うように咲いています。原町区に住んでいる男性は「故郷に帰る、帰らないには色々事情がある。それより他の地域からの移住者が増えることに期待したい」と話しました。前を向いて走りながら被災地を応援、同時に復旧の様子を確かめる取材のような時間でした。これからもこんなランニングをしていきたいです。
(共同通信/2018年4月2日配信)
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