心を育てる貴重な時間
バラの香りが漂う5月、緊急事態宣言が延長されました。スポーツでは目標となる大会が中止や延期される中、選手は黙々と練習する毎日でしょう。日本郵政グループ女子陸上部の橋昌彦さんに電話で伺うと、「今は心のスタミナをつける時ですよ」と。
チームは本拠地である東京都小平市で生活しながら週に3回少人数で練習。あとは個人練習を行っているそうです。橋さんは加えてこんなことも。「中学・高校からトップを走ってきた選手もいますので、大会から解放されたことで選手寿命が延びると考えます」と。すごく前向きなのです。
そしてご自身はこの間に、本を沢山読んでいるそうです。最近では、ナチス強制収容所での体験を心理学者が記した「夜と霧」を読み、目的と希望を失わない大切さを改めて感じたと。また、脳科学者の書いた「10代の脳」は若い選手の心理を理解する上で役立ったと話します。またチームに所属する鈴木亜由子さんが読んでいるのは「能に学ぶ、和の呼吸法」。来年の東京五輪に備える亜由子さんらしい。大会がないこの期間は、心を育てる上で貴重な時間なのだと感じます。
先日はテレビで池江璃花子さんのドキュメンタリー番組を観て、何度も泣いてしまいました。白血病から立ち上がり、一歩一歩と前に進む姿に勇気を頂いたのです。池江さんは番組の中で、KingGnuの「白日」という歌に励まされたと話しました。「まっ新に生まれ変わって人生一から始めようが…」という歌詞が心に響いたと。
皆、次の舞台まで、自分をリセットして力を蓄えているのでしょう。こんなステキな方々に触れると、私も自分を成長させる時間にしなきゃとファイトが湧いてきます。
(共同通信/2020年5月11日配信)
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