走る、歩くで達成感
梅雨の晴れ間にジョギングすると、最近走っている人が多いこと気づきました。ステイホームが長く続き運動不足の人が増える中、走ることは手軽に出来るスポーツだからだと思います。ラジオ番組でそんな話をすると「加えて、人類はもともと持久走が得意なんですよ」と為末大さんが教えてくれました。
ゲストで出演してくれた為末さんの話しによると「人類の歴史のほとんどは狩猟や採集で、狩りをしたり木の実を拾ったりするために、遠くに移動出来る人が生き残ったと言われています」と。人類700〜500万年の歴史の中でそのほとんどが狩猟、採集生活。農耕、牧畜はわずか1万年前からなのです。つまり、私達の遺伝子には長く走ったり歩いたりする習慣が組み込まれているのでしょう。
お話しを伺いながら、子どもの頃、祖母から「私のお婆ちゃんは千葉の南房総から埼玉の秩父まで歩いて夜祭を見に行ったのよ」という話しを思い出しました。200km以上の距離です。お伊勢参りも富士講も、何日もかけて数百kmを歩いて旅をしたのです。古代とは違い、生きる上での移動が必要なくなっても、人々は遠くへ歩いていく楽しみを続けました。ゴールを目指して、目標を達成する喜びを味わうものだったのだと思います。
ジョギングを楽しむ人や市民ランナーが増え続ける理由を私は「皆、前に進みたいから」とか「世の中便利になり過ぎて…野生に戻りたいんですよ」なんて話してきました。この日、為末さんからもっと根本的な話しを伺えて、走る世界が深まりました。
マラソンは旅。ゴールは、明日へ続く窓。心豊かな日常に続いているのかもしれません。
(共同通信/2020年6月29日配信)
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