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おしゃべり散歩道2020

見事なスパートで優勝

 新潟のデンカビックスワンスタジアムで10月1日から3日まで、日本陸上競技選手権が開催されました。私は田中希実さん(21歳、今夏1500mと3000mの2種目で日本記録を更新)に注目しながら競技場へ。2日の女子1500m決勝のスタート1分前、田中さんはピョンピョンとカンガルーのように2回その場で大きくジャンプ。スタートすると、最初は集団の中に。そして600mを過ぎるとキュッとスピードを切り替えてスパート。そこからは独壇場、他を寄せ付けない見事な走りで優勝したのです。古風な美しい顔立ちですが、走りはオランダのハッサン選手(昨年のドーハ世界陸上選手権で1500mと1万m2冠)を思わせるパワフルさ。そのギャップが魅力です。
 レース後、サブトラックに行くと、お父さんの健智(かつとし)さんとお母さんの千洋さんの姿が。「希実さん、スタート前にすごく高くジャンプしていました」と言うと「それ、中学生の時からのルーティンです。あのジャンプで調子が分かるそうですよ」と千洋さん。朝食に何を食べたか尋ねると「新潟名物のタレかつ丼。だから勝てたんやないかな」と千洋さんは嬉しそう。千尋さんは北海道マラソンを2度優勝、健智さんは全日本実業団陸上で3000mSC6位入賞者なのです。
 暫くしてサブトラックに戻ってきた希実さんは、大喜びしているわけでもなく落ち着いています。1500m決勝の5時間前には、800mの予選を走りました。その間、大学(同志社大)の授業をリモートで受けたそうです。何の授業だった?と聞くと「身体運動制御論です」とニッコリ。田中さんはお勉強も好きとのこと。文武両道のシンデレラに、丸い月が微笑んでいるようにみえました。

(共同通信/2020年10月5日配信)

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