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おしゃべり散歩道2020

パラスポーツの原点

 11月中旬、夏にオープンしたばかりの別府市「太陽の家ミュージアム」を訪ねました。ここでは、日本パラスポーツの父と呼ばれる中村裕さん(医師・故)の歴史が紹介されています。整形外科医だった中村さんは英国でリハビリテーションを学び、1964年の東京パラリンピックでは選手団長に。その翌年、障害者の自立と雇用を促すために「太陽の家」を創設したのです。
 ミュージアムではそんな中村さんの歴史に加え、パラスポーツや障がい者の仕事を体験できるコーナーも。広くて木々に包まれるような造りは、中にいるだけで幸せな気持ちになりました。コロナ禍ですが、大分県内の児童や生徒が沢山訪れているそうです。でも入場料に障がい者割引がありません。どうしてですか?と、山下達夫理事長に伺うと「障がい者も健常者も平等。差別してはいけません」とキッパリ、笑顔で。「ノーチャリティー、バットアチャンス」(保護より機会を)という中村裕さんの精神をしっかりと山下さんは受け継いでいるのです。
 展示されているものをみると、中村さんの自筆の手紙や白衣、また世界地図にはピンがいっぱい刺さっています。「中村先生は学会やパラスポーツの勉強のためによく海外に行っていました」と山下さん。
 障がい者が自立した生活を送るために工夫された様々なグッズも展示されています。手首が曲がらない人が使いやすいフォーク、スプーンでも食材がすくい易いお皿などは実際に手に取って体験できます。建物前の広場には手だけで運転できる車も展示。また、段差や砂利道を車いすで移動してみるコーナーも。
 共生社会を肌で感じることが出来る施設です。ぜひ多くの皆さんに訪れて欲しいと思いました。

(共同通信/2020年11月20日配信)

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