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おしゃべり散歩道2020

新谷さんが異次元の走り

 止まっていた時計が動き出したような感動でした。12月4日、大阪の長居陸上競技場で開催された日本陸上競技場選手権(長距離部門)。女子1万mが終了した直後の電光掲示板は、まるで宝石箱の輝き。日本記録で優勝した新谷仁美さんの名前と30分20秒44のタイムの横に「NR」(日本新記録)の記しが赤く輝き、9位までの殆どの選手の横に「PB」(自己ベスト)も。レースが速い展開で進んだことで自己ベストが続出したのです。
 それにしても、18年ぶりに渋井陽子さんの日本記録(30分48秒89)を更新した新谷さんの走りは凄まじかったです。私はフィニッシュラインの近くで見ていましたが、まるで鬼ごっこのよう。2000mまではチームメイトの佐藤早也伽さんが先頭を引っ張り、そこから先頭の新谷さんは次々に選手を周回遅れに。新谷鬼に捕まらなかったのは2位の一山麻緒さんだけです。次元の違う速さを見せつけられました。
 新谷さんの活躍に欠かせないのは、横田真人コーチの存在です。新谷さんは彼の指導を100%信頼して過酷なトレーニングを積み上げています。そして今回も練習メニューを完璧にこなし、レース前に「結果が悪かったら横田さんのせい、良かったら横田さんのおかげ」と冗談で言うくらい。横田さんは800mで日本選手権を6回制覇し、慶応大学在学中の2012年にはロンドン五輪にも出場しました。そしてアメリカ・ロサンゼルスの陸上クラブで2年間競技をしながら、米国公認会計士の資格も取得。話していても知性が光ります。それでいてフランクで面白い人。プロフェッショナルな指導者と、プロ意識の高いアスリートが世界を目指す、その第一歩にしびれました。

(共同通信/2020年12月7日配信)

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