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おしゃべり散歩道2002

頑張れ!さっちゃん

 「さっちゃん、もっとクリームつけたほうがいいよぉ」。カサカサの手をした山下佐知子さん(第一生命陸上部監督)に、わたしは冗談交じりに言いました。
 11月3日、埼玉県で行われた東日本実業団対抗女子駅伝でのことです。髪の毛を後ろに束ね、まったく化粧をしない山下さん。監督7年目の彼女は、年々無駄なものをそぎ落とし、「自信」という輝きを満たしていくようにみえます。
 この日は、三井住友海上に次ぐ2位でゴールイン。昨年が3位、一昨年が4位だったので着実に順位を上げています。でも、レースの内容(2区から三井住友海上が独走態勢)には納得していない様子でした。
 レース後、選手たちの前で「もっと攻めの走りをしないと駄目だよ。まるでチームの存在感がなかった」と。声が大きいからすごい迫力なのです。
 わたしからみると、彼女は男性監督よりも、ストレートにものを言います。だから、選手は厳しいと感じているのではないでしょうか。ここに至るまでの道のりは長かったと思います。
 監督1年目と、3年目は予選落ちしました。当時を振り返り山下さんは「あのときは早く選手を強くして辞めたいと思った」と話します。そして「女だから駄目!とは思われたくない。わたしが選手を育てられないのは『能力』なのに、周りは(女性監督が珍しいから)『女だから』と言うでしょう」と。こんな気持ちが原動力になったようです。
 そして、ここまで上りつめた今、彼女はさらに上をみつめています。「スポーツに詳しい人以外の人も、知るような選手を育てていかなきゃ」と、日に焼けた小さな顔の目が、強く光るのでした。全身で選手に向き合い、人を育てながらどんどん、りりしくなっていくさっちゃんは、すてきです。

(共同通信/2002年11月8日配信)

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