運命的なもの感じる2人
有森裕子さんのブロンズ像が、岡山市にある桃太郎スタジアムに建立されました。創刊125周年を迎えた山陽新聞社などが、バルセロナ・アトランタ両五輪メダリストという有森さんの偉業をたたえ、岡山県に寄贈したものです。
12月22日、わたしはその除幕式に出席しました。
ブロンズ像を覆う白い布が落とされると・・・。「有森の母ちゃんに似てるな。」「有森よりちょっと足が長いな」と、隣で小出さんがおどけるので、厳粛な場なのに私は笑いをこらえるのに大変でした。この像は、岡山大学教育学部助教授上田久利さんが制作したものです。その走る姿には彼女の持つひたむきさや強さ、優しさがにじみ出ているようでした。
カーキ色のツーピース姿の有森さんは「立派な像を造っていただき、感謝しています。像の精神を心に、より精進し、生きていきたい」とあいさつしました。
有森さんのブロンズ像から50mはなれた所に人見絹枝さん(1928年アムステルダム五輪女子800m銀メダリスト)の銅像があります。有森さんが人見さんを知ったのは高校3年の時だそうです。山陽ロードレース大会に出場し、賞品に人見さんの自伝をいただいたそうです。それからは毎年、同県に偉大な先輩がいることを誇りに思い、人見さんのお墓参りをしているのです。有森さんがバルセロナで銀メダルに輝いた8月2日は人見さんの命日。また、その日は日本女子陸上界に人見さん以来、64年ぶりのメダルがもたらされた日となのです。二人には運命的な何かを感じます。スポーツを通して女性の自立に尽力した人見さん。そして今、国連の仕事で女性の地位向上に努める有森さん。二人のブロンズ像が50m離れて並び、スタジアムの正面を向いているのに心が震えます。
(共同通信/2005年1月5日配信)
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