うれしい新年のスタート
今年もお正月は駅伝から始まりました。元日、群馬で行われた全日本実業団駅伝(ニューイヤー駅伝)に俳人の黛まどかさんと共にゲスト出演。2、3日の箱根駅伝は千葉の実家でテレビ観戦。つくづく駅伝は新年にぴったりのスポーツだと感じました。
ニューイヤー駅伝の中継スタジオとなった群馬県庁32階には朝から上州三山を照らす初日の出を拝もうとたくさんの人が。視聴者から募集した俳句の中にも「山懐に抱かれて」とか赤城のからっ風を詠んだものが多くありました。黛さんが最優秀句に選んだのは「駅伝や勝つも負けるも初御空」。
そして私が最優秀選手(そんな賞はないけれど)に選んだのは、優勝したコニカミノルタ一区を走った太田崇選手です。ケニア選手の起用が多かった1区。日本人でただ一人先頭集団につき、勇気のある大胆な走りが雄渾な山さえも揺らすようでした。
日が変わり、箱根駅伝は亜細亜大学が総合優勝。監督の岡田正裕さんは元ニコニコドー(熊本)実業団チームの監督です。元五輪代表の松野明美さんを育てた人ですが、本当に情が深い人で一度会うと好きになってしまいます。ニコニコドーが廃部になり、7年前に亜細亜大学へ。家族を熊本に残し東京へ単身赴任し、選手と共に寮生活を始めたのです。
監督の教え子にチームQ(高橋尚子さんの)で食事を担当している佐藤直子さんがいます。Qちゃんが最も慕っている親友です。彼女はニコニコドーから積水化学に転部が決まり、監督と共に東京へ来ました。いざ、監督と別れる時に佐藤さんは父親と別れるような寂しさに大泣きし、監督に手を握られながら「お互い1からのスタートだよ、頑張ろう」と言われたそうです。亜細亜大の選手達も皆、監督のことを父のように慕っています。岡田さんの顔が画面に映ったとき、私は涙がこぼれました。箱根駅伝の優勝は私にとっても嬉しい新年のスタートとなりました。
(共同通信/2006年1月9日配信)
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