世界遺産を眺めながら
新幹線の車窓にそぼ降る雨、その向こうに姫路城が美しい姿を魅せていました。1月半ば、姫路商工会議所青年部の主催による「ランニング教室&講演会」が開かれ、私は講師としてお招きを受けたのです。
体育館の入り口。雨に濡れながら、緑色のはっぴを着た青年部の皆さんが元気にお客様を誘導していました。会長の宝角さんは私に「将来の目標は世界遺産姫路城を眺めながら走る、1万人規模のフルマラソンの大会を開くことなんですよ」と活き活きとした表情で話しました。姫路には姫路城だけでなく映画ラストサムライのロケ地となった書寫山圓教寺(しょしゃざんえんぎょうじ)もあり、観光資源に恵まれた場所に、世界中からランナーが集まって欲しいと考えているようです。
そんな意気込みが地域の方々にも伝わっているのでしょう。体育館に入ると家族連れの方が多く、300人近くの方々が私を迎えてくれたのです。私はあまりの熱気に「兵庫県は陸上でも須磨学園や西脇工業、報徳学園などが強いものね」と話すと、一番前で野球部の子供達が「陸上だけじゃないよ、野球も強いんだよ」と。講演後、体作りのサーキットを全員で行うと、子供達は我先にと大人を一周抜いてしまう勢い。地域でスポーツを活発に行おうとする気運を肌で感じることが出来ました。
スポーツで自分達が元気になれる、豊かになれることを体感している所では、国際的なマラソンが根付くのは早いでしょう。今、東京でも来年度の大東京マラソンに向けて準備が進められています。数万人規模の市民マラソンはその都市の元気を表わす力にもなり、街の活性化にもつながります。ただ、実現に向けて一番大事なことはその土地にスポーツ文化が根付いているかどうかです。姫路は実現に向けて確実に進んでいく場所だと感じました。
(共同通信/2006年1月16日配信)
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