南三陸町の爽やかな走り
春分の日、初夏を思わせる暖かさに桜がほころび、子ども達の緊張を和らげているようでした。東京調布市の味の素スタジアムで開かれた第4回中学生東京駅伝。東京都の中学生の体力低下を改善しようと始まったもので、中学2年生が対象です。東京都をあげて市区町単位で争われ、瀬古利彦さんと私は毎年場内アナウンスで解説をしています。
今年は宮城県南三陸町の男子チームが招待されました。男子は51チーム、女子は50チーム。陸上部だけでなく、野球部、バスケットボール部など様々な部活動から参加し、男子で「茶道部」、女子で「珠算部」という所属もあり微笑ましかったです。
そして多くの選手がオーバーペース気味で、後半失速してしまったのです。江戸川区の10区を走った宮地駿君は、たすきを受け取ると猛ダッシュ。中継所に戻ってくる頃はヘロヘロで歩くような状態。意識がもうろうとしていたのでしょう。次の走者にたすきを渡さずに、頭に巻いていた鉢巻きを渡してしまいました。スタジアムは笑いの渦に。そんな頑張りと暑さもあって、救護室に36人が運ばれてしまいました。しかし、救護の方に話を伺うと「脱水などで来た人は少なく、責任を果たせなかった精神的ショックによるものが多かったです」と。申し訳なさ、ふがいなさ、切なさ等々で流した涙が生徒達をたくましくしていくのでしょう。
南三陸町の選手たちは真っ青な空と海を思わせるブルーのユニフォームで参加し、後ろの方でゴール。開会式の時には緊張していましたが、閉会式では晴れ晴れとした表情で「明日、スカイツリーを観に行きます」と嬉しそうでした。友情と責任を繋ぐ躍動感あふれる舞台に感動しました。
(共同通信/2013年3月25日配信)
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