バス同乗でリポート
熱田神宮から伊勢神宮まで106.8kmを8区間でつなぐ全日本大学駅伝が11月1日に開催されました。注目は5連覇を狙う駒澤大学と学生駅伝3冠を狙う青山学院大学の優勝争い。でも初の日本一に輝いたのは東洋大学でした。
私は監督の乗る大型バスに同乗し、レース中にテレビのレポートを。男子学生駅伝の中継も監督車に乗るのも初めてでしたが、貴重な経験をさせて頂きました。バスの座席は早い者勝ち。一番乗りは山梨学院大学の上田誠仁監督で、続いて東洋大の酒井俊幸監督。選手を左手に見ながら走行するために左側から席が埋まります。左の一番後ろの席は駒澤大の大八木弘明監督の指定席のようで、この大会を12回も制している名将に皆さんが一目置いている様子が伝わりました。
そしてスタート後、バスは選手を追い越しては各区間の中間付近で停車。監督たちは沿道で選手達にゲキを飛ばしますが、この一言が大事なのでした。選手は監督の声を聞き逃さないように沿道寄りに。酒井監督は常に「ラスト2キロから行けよ!」と、最後のスパートを指示します。先頭でタスキを渡すことが次の走者に勢いをつけるからです。そして大八木監督のゲキは一際大きく「いいぞ、2秒詰まってるからな」と背中を押します。移動中の車内では、次区間の選手や沿道のマネージャーに携帯電話で指示を出す監督が多い中、青学大の原晋監督は穏やかな表情でテレビ画面を見つめていました。
アンカーで2位に1分近い差をつけても「まだまだ分かりません」とずっと緊張の面持ちだった酒井監督。選手が優勝のゴールテープを切った瞬間、目に涙が。選手を蔭で支える監督たちの奥深さに感動した一日でした。
(共同通信/2015年11月2日配信)
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