野性味あふれた走り
玄界灘をわたる風にも春が感じられた2月25日、海の中道海浜公園でクロスカントリー日本選手権が開催されました。男子解説の両角速さん(東海大学陸上競技部、長距離・駅伝監督)と長時間ご一緒する幸運に恵まれたのです。大変穏やかな方で、優しい表情に教育者としての雰囲気が漂います。両角さんは長野県の佐久長聖高校で16年間陸上部を指導され、多くの名選手を輩出してきました。佐藤悠基さん、大迫傑さんの五輪代表選手をはじめ、上野裕一郎さん、村澤明伸さんなど、現在実業団で活躍する選手がズラリ。強化方法を伺うと「クロカンですね。全身持久力やスピード、リラックスの仕方など総合力が養えます」と。そんな両角さん、佐久長生高校では自ら重機を操り、保護者の協力も得て、高校に600mのクロカンコースを作ってしまいました。そして東海大学の監督になられて6年、大学にも1100mのクロカンコースを整備し、選手の重要な練習場所になっているのです。
さて、男子12kmのレースは、東海大学の鬼塚翔太さんが積極的な走りで主導権をとり、神奈川大学の大塚倭さん、九電工の東遊馬さん達と競り合いが続きます。「上り坂はおへそを地面に近づけるように前傾するといいです」「下り坂はブレーキをかけないように、かかとでドンと着地しないように」等々、両角さんの解説を聴いていると自分が走っているような気持ちに。選手は砂地に足をとられながらもガムシャラに走り、壁のように立ちはだかる高さ6mの丘を勢いよく登り、その姿は野性的でした。そして最後の最後、東さんと胸の差で鬼塚さんが優勝。満足気な両角さんの隣りで、私もクロカンを満喫できました。
(共同通信/2017年2月27日配信)
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