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おしゃべり散歩道2001

Qちゃんのプロ宣言

 ついに、Qちゃん(高橋尚子)がプロ宣言しました。「死に物狂いで頑張った選手が報われないと…」と、小出義雄監督。わたしも全く同感です。
 そういえば、一月の大阪国際女子マラソンの前日。大阪のホテルで有森裕子さんとQちゃんの対談がありました。そのとき、私は進行役を務めましたが、すでにプロ活動をしている有森さんの話を食い入るように聞いていたQちゃんの姿が印象的でした。
 現在、米コロラド州のボルダーで生活する有森さん。月に一度の割合で、米国内のレースに出場しているようです。大会エントリーから、ホテルの予約、次の大会への交渉など全部一人で。「最初はたどたどしい英語で…。レースより疲れました」と。
 今、有森さんはコーチをつけずに一人で練習に励んでいます。「チーム有森」の練習パートナーとトレーナーにはお給料を払いつつ。プロとしての生活は決して生易しいものではないようです。
 そのそばで、「私はまだまだ甘いですね」とQちゃんは話しながらも、「有森さんのおかげで、次に続く人が楽になります」とひとみを輝かせていたのです。
 ただ、今実業団チームに所属する選手たちが皆、有森さんやQちゃんのように、実績と人気があるわけではありません。プロになりたくてもなれない。でも逆に好きな陸上競技を「実業団」にいるから、けがをしてレースに出場できなくても続けられる安心感もあるのです。
 そのことを有森さんに尋ねると、一言、「要は選択肢なんです」と。わたしは衿を正したくなる思いでした。これからQちゃんも、大変なことがあるかもしれないけれど、ますます大きくなってほしいと思います。
 後輩たちは、後ろ姿を見て育ちます。現に、川上優子さん(沖電気、シドニー五輪女子一万メートル代表)は、今回のQちゃんのプロ宣言について「メダルを取るってどういうことなのか? その後どう変わっていくのか、高橋さんを見ていて、わたしも自分がどうなりたいのかを考えるようになりました」と話します。少しずつ環境は変わっていきそうです。

(共同通信)

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