高まるチャレンジ精神
Qチャン(高橋尚子)はさぞや無念だったことでしょう。ベルリンで出した世界最高記録が、1週間後のシカゴマラソンでキャサリン・ヌデレバ(ケニア)に塗り替えられてしまったのですから。
本当は、ベルリンを走った後、シカゴも走る予定だったというQチャン。常識的に考えたら「とんでもない」話です。日本陸連サイドがQチャンの体を心配して止めに入った気持ちもわかります。しかし、彼女と小出義雄監督は、今までも常識では考えられない型破りなこと(例えば標高3500メートルでの高地トレーニングなど)を淡々とやってのけてきた人たちなのです。「常識」で考えてはいけません。
わたしは、シカゴを走らせてあげたかった。ヌデレバと勝負させてあげたかった、というのが本音です。Qちゃんと小出監督は「体力の限界」に挑みたかったのですから、そのチャンスはしばらくは訪れないかもしれません。
きっと、常識では考えられないQチャンの人並み外れたスタミナなら、ベルリンを走った翌日と、翌々日ぐらい軽めのジョギングでつないだら、5日後は元気に回復しているかもしれない。そして、たとえシカゴを走ったことで体力がかなり消耗してしまったって、既にオリンピックの金メダルと世界最高記録という目標を達成しているのですから。その後はゆっくり休養することもできるのです。
それにしても、ヌデレバはシカゴで何と冷静な走り方をしたのでしょう。最初の5キロがQチャンのベルリンより1分弱遅く、後半徐々にペースアップ。この落ち着いた走り方に、ポーンと最初から飛び出しがちなQチャンも教えられたはずです。
ヌデレバにとっては、昨年の4月、ボストンマラソンで優勝していながらシドニー五輪代表に選ばれなかったことが相当悔しかったと思います。Qチャンと同じ29歳。良きライバルを得て、Qチャンのチャレンジ精神はますます高まることでしょう。
(共同通信)
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