実にさわやかな一日
木々がうっすらと赤く色づき始めた仙台の宮城スタジアム。ここで10月13日から18日まで国民体育大会が開催されました。15日に陸上の観戦に行くと「(日本陸連理事として)表彰を頼むよ」と言われ、少年女子1500メートルの表彰式に。優勝したのは宋由香利さん(聖心ウルスラ学園高校2年生)。マラソンの宋猛さんの娘さんです。
懐かしさがこみ上げ「ゆかりちゃん?」と切れ長の目の美少女をしげしげと見つめてしまいました。「ハイ!」とはにかむ笑顔がかわいい。
彼女が生まれた年(1984年)にわたしは宋兄弟と4ヶ月後に迫るロサンゼルス五輪に向けて合宿中でした。温かいお人柄の2人に妹のように接していただき、楽しい青春時代だったのです。
それから3歳になった由香利ちゃんが、ピアノを習い始めた、と猛さんから聞いていましたが、こんなに大きくなって!。さすが血統の良さで(お母さんは元走り幅跳びの日本チャンピオンの小川恵子さん)優勝!
月日の流れの早さと由香利ちゃんの成長ぶりに、胸にこみ上げてくるものがありました。
そして、もう一つの感動が。「青木半治賞」を受賞した室伏広治君と鉄人の異名をとるお父さんの重信さんと、夜お食事に出掛けたのです。広治君は成田高校(千葉)の後輩。どの大会でもあのりりしい顔で礼儀正しく挨拶に来てくれます。この日、食事をしながらお父さんの話に耳を傾け、遠慮気味に質問する広治君の姿が印象的でした。
「10年間、記録が伸びないときがあった」と父が言ったとき、広治君が静かにうなずき「それでどうして続けられたの?」と尋ねると、父は「自分を試していたんだよ」と一言。お父さんを心から尊敬している気持ちが伝わってきます。
どんなに強くなっても素直さと謙虚さを失わない広治君。由香利ちゃんとの再開を含め、実にさわやかな秋の一日でした。
(共同通信)
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