よさこいの乱
高知県で開催されている「よさこい国体」は明日31日に閉幕するが、橋本大二郎・県知事が起こした『よさこいの乱』が論議を呼んでいる。
「これまで最下位に近い高知県が開催県になって、いきなり(総合)優勝するのはおかしい」と、38回続いた地元優勝に異議を唱えた。そして、従来は常識のように行われていた、優勝のために有力な県外選手を県職員に採用することなどをしなかった。
さらに宿泊施設の不足を理由に陸上競技は全体の開幕より一週間早く始まった。入場行進のない陸上の開会式は、さすがに寂しかった。しかし、そこでは高校生のボランティアたちをはじめ、運営に携わる一人ひとりが一生懸命に動いていた。「できる範囲で精いっぱいやろう」とする無理のないまっすぐなパワーを感じた。
越県強化、かさむ運営費…。だれもが「どこかおかしい」と思いながら、タブー視してきたことに風穴があいたようだ。これからの時代にあった国体のあり方についても考えさせられる。
以前読んだ「魅力的な政治家」についてのコラムに「この人はもう何もしてくれないだろうと思われた時点で魅力をなくしてしまう」とあった。つまり、国民は、冒険心を持った「何かやってくれそうな人」に期待すると。
そういう意味で橋本さんは魅力的なのかもしれない。懇親会でのこと。ご自身のスピーチ前に、目を閉じて金魚みたいに唇をぱくぱくと動かしておられた。尋ねると、話す内容を暗記しているとのことだった。一見、豪快に見えてすごく繊細で真面目な人なのだ。
「よさこい国体」の意義の大きさを口にする関係者は多い。来年から国体が変わるかもしれない。
(東京中日新聞/2002年10月30日掲載)
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