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おしゃべり散歩道2005

楽しみな弘山さん

 童話ムーミンの故郷、フィンランドのヘルシンキでこの夏、世界陸上が開かれます。緯度は北緯60度。東京が36度ですから、8月中旬でも平均気温が15度前後です。ここ数年、オリンピック、世界陸上のマラソンは酷暑の中で行われることが多かったので、この涼しさは珍しい。加えて起伏のほとんどない周回コース(3周)なので、高速レースが予想されます。
 さすが日本代表に選ばれた男女10選手に共通しているのはスピード。高速レースを見据えたメンバーです。その中で私が最も注目するのは「最後のビッグチャンスに精いっぱい頑張りたい」と話す36歳の弘山晴美さん。彼女は過去、千五百から一万メートルまで日本記録を樹立し”トラックの女王”と呼ばれていましたが、マラソンでは悲劇のヒロイン的な存在です。
 現在、資生堂チームの若手とともに合宿を行い、後輩たちは弘山さんの言葉、練習、生活を通して「競技者として大切なこと」を自然に学んでいます。チーム全体が今、弘山さんを軸に日本のトップに躍り出ようとする勢いなのです。
 「私の原点は93年のシュツットガルトの世界陸上にあります」と弘山さんは話します。実は彼女が千五百、三千メートルで代表になったこの大会は、中国の馬軍団が陸上界に革命をもたらしました。馬軍団の選手たちが一万メートルで世界記録を樹立した時、その5000メートルの通過タイムが当時の五千メートルの世界記録でもあったのです。
 そんな走りを目の当たりにした弘山さんはレースだけではなく、馬軍団の練習をサブトラックによく見に行ったそうです。そして日本に帰ってから、よりスピードに磨きをかけようと八百メートルの練習をし直したのです。それから12年、ずっと第一線で走り続けています。最近の彼女には”時満ちた”ような余裕が感じられます。8月のヘルシンキが楽しみです。

(共同通信/2005年4月17日配信)

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