目的意識、新た
東京代々木の岸記念体育会館へ向かう道。赤いツツジが帯のように咲いていました。この日、日本陸上競技連盟の臨時理事会が行われたのです。私は今年で3期目。70歳定年制により顔触れが大幅に入れ替わって初めての会でした。
冒頭で河野洋平会長は「理事の仕事は名誉職ではありません。これから皆さまには一つ一つの仕事に役割を持っていただきたい。外国へ出張するときも、目的意識を持って意味のある出張をお願いしたい」と力強くあいさつ。私は河野さんの言葉に感銘を受けました。
外国に限らず、国内で行われる国体や日本選手権の大会でも理事の方々は用意された部屋の中で談笑していることも多く、私自身「何をしたらいいんだろう」と戸惑うこともありました。でも会長の話を聞きながら、国内、外のどんな大会に行くときも自分でテーマを決め、その視点で大会を見つめ、結果を理事会できちんと報告する。こういうことを一つ一つ積み重ねていってこそ、選手、監督のために何ができるのかという理事としての責務の一つを果たせるのだと感じました。
実は去年のアテネ五輪の壮行会でも、河野さんの言葉に衝撃を受けました。選手に向けて「あなた方は今まで、自分の、地域の、学校の、会社の、それぞれの名誉ために一生懸命頑張ってこられました。でもアテネでは国の代表として、国の名誉のために頑張らなければいけません」とスピーチされたのです。
一見時代遅れに聞こえるかもしれません。でもその話は、選手たちが「自分のため」だけではない「国の代表」ということをしっかり自覚できるもので、すごく新鮮に感じられました。選手たちの目が真剣に輝いていくのが分かったのです。
リーダーの魅力は組織に活を入れる、一人一人をやる気にさせることだと思います。陸連のために一層頑張っていこうと襟を正しました。
(共同通信/2005年4月27日配信)
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