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おしゃべり散歩道2005

観客と一体のレース

 初夏の風に田植えの匂いを感じる季節、陸上界では各地域でサーキット(トラック&フィールド競技)が行われています。私はこの時期決まって思い出すレースがあります。
 それは選手の頃ノルウェー・オスロで行われたビスレットゲームズ(世界各国から選手たちが集まるヨーロッパのサーキット)です。ノルウェーはちょうどこの頃白夜が始まり、一斉に草花が芽吹いて湖風が草の匂いを運んできます。ビスレットは星空がきれいなナイターで行われました。私は五千メートルに出場。競技場に入ると、スタンドを隙間なく埋める観客の多さと、観客とトラックとの距離が非常に近いのに驚きました。
 さてレースがスタート。観客は先頭集団のリズムに合わせて手をたたきます。後半になると今度は観客がスポンサーの看板を太鼓のようにたたき、リズムを早め私たち選手のペースアップを促しました。私はそのリズムに乗るように足を運んだのです。そして五千メートル15分38秒の日本記録を樹立。まさに“声援に後押しされた”記録でした。
 その時一緒に参加した宗兄弟(旭化成)はこのレースに感動し日本でも同様のレースを開きたいとその夢を実現しました。それが毎年5月第三土曜日に宮崎・延岡で行われている“ゴールデンゲームズinのべおか”です。陸上ファンが多い延岡の人たちはこの日を楽しみにしています。旭化成のグラウンドにはアウトコースぎりぎりまで観客が押し寄せ、日本の高校・大学・実業団のトップクラスの選手を間近で応援できます。メガホンで声をかける人、ラッパを吹く人、拍手する人。みんな選手達のピッチに合わせ、選手と一緒にレースをします。この大会で自己新記録を作る選手が大勢いるのです。
 日本のサーキットもこれからビスレットゲームズやゴールデンゲームズのような大会が増えると、子供を含めた幅広い人がもっと陸上競技を楽しめ、陸上ファンが増えると同時に、選手達の記録向上につながるはずです。

(共同通信/2005年5月4日配信)

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