初のGT500観戦
うっすらと雪をかぶった富士山へ向かい、様々な色の緑を車で抜けると真新しいスタンドが見えてきました。初めてのモータースポーツ観戦。富士スピードウェイを訪れたのです。5月4日、“FUJI・GT500kmレース”が行われました。
私はトヨタチーム(ZENTセルモ・スープラ)で出場している立川祐路選手を訪ねました。夫が立川さんの友人であるからです。ピットに行くと「乗ってみませんか」と立川さん。ハンサムな顔立ちに170p56sの体は想像以上に華奢。お言葉に甘え私は赤と銀色のシャープな車の運転席に座らせてもらいました。狭い!それは150pの私でも窮屈。また寝そべるような体勢で視界が狭く感じられます。「僕だってそうですよ。あまり視界が広かったら怖いですよ」と立川さんは笑うのでした。
控え室には車と同じ色合いのレーシングスーツがかけられていました。その中に着るTシャツを見てびっくり。まるで昔の冷蔵庫の裏側みたいな形にチューブが縫いこんであったのです。「ここに冷たい水が流れて体を冷やすんです」。レース中、車内は気温60度以上になり、二時間のレースを終えると2〜3s体重が落ちる。車とつないだチューブが外れたらそれだけでリタイヤしなければならない時もあるそうです。
レース前、立川さんはゼリー飲料をひとつ飲んだだけでした。「朝食も昼食も摂りません。食べると何だか面倒くさくなって集中力が落ちるのです」この言葉は深く私の心に染み込みました。立川さんの精悍な顔、目の輝き、研ぎ澄まされた精神のすべてを表しているように感じたからです。
そしてレースはチームメイトの高木虎ノ介選手と交代しながら500q、ずっとトップを走り続け優勝。私はそのスピードと命を懸けた男たちの戦いに体が震えました。ゴール後、おめでとうと声をかけた私に「久しぶりの優勝です。勝利の女神のおかげです」。立川さんは優しい笑顔で言って下さいました。
(共同通信/2005年5月11日配信)
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