監督とのきずなを痛感
大事に育ててきた我が子が就職や進学で家を出る時の親の気持ち。娘を嫁がせる父親の気持ち。その心中を聞けば涙を流さずにはいられません。Qちゃん(高橋尚子さん)が小出義雄監督のもとを旅立ちました。5月9日、東京・赤坂プリンスホテルで行われた記者会見に駆けつけた私は小出さんの寂しそうな表情から、“これはQちゃんが決断したことなんだ”と察しました。
案の定、記者会見の内容はQちゃんの「巣立ち」を感じさせるもの。三年後の北京五輪へ向けて、完全燃焼したいと思う彼女の気持ち、そのためには小出さんの庇護から抜け出さなければ本当の強さを身に付けられない、という思いが痛いほど伝わりました。
会見の翌日、小出さんに電話をすると、「明美さんかー、新婚生活は楽しいかー」といつもと変わらない明るい声が聞こえてきました。今回のことはいつ頃から相談をされていたのですか、と尋ねた時、小出さんは急に寂しそうな声で「4月13日に突然独立しますって言われたんだ。何の相談もなかったんだよ、寂しいもんだなー」と。彼女の独立よりも、相談されなかった寂しさを話すのでした。
私は今年のお正月、小出さん宅を訪れた時のことを思い出しました。奥様の啓子さんが「小出は高橋さんが元気だと元気なんですよ。高橋さんが元気ないと小出もシュンとしているんですよ」と言われたのです。絆の深さを感じずにはいられませんでした。Qちゃんのことが自分のことのように感じられたのでしょう。そんな啓子さんに今回のことを伺うと、「確かに寂しいけれど、小出とも話しているんですよ。娘だって親の知らないうちに恋人を作って、何の相談も無しに結婚を決めて、出ていってしまうんですから」。
小出さんは電話口で最後は明るく「でもQちゃんなら出来るよ」と話しました。Qちゃんの北京へのチャレンジを誰よりも熱く見守っているに違いありません。
(共同通信/2005年5月25日配信)
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