実はユーモラスな瀬古監督
初夏の風がランナーたちに青葉の香りを運んでくれました。5月21日に行われた富士・箱根ふれあいスポーツフェスタ。今年も去年に引き続き私は瀬古利彦さん(S&B食品陸上部監督)と共にゲストランナーとしてお招きを受けたのです。前夜祭から瀬古さんは会場に華やぎをもたらし、多くのランナーたちを喜ばせました。選手の頃が寡黙なランナー・修行僧という印象が強かっただけに、実際の瀬古さんのユーモラスなキャラクターに触れると、皆そのギャップに驚きながら楽しい気持ちになるのでした。
レース当日は澄み渡る空に富士山が浮かぶ中、開会式で瀬古さんからランナーへアドバイス。「坂道は上りも下りも抑えて、平坦なところで頑張りましょう」ランナーの皆さんは真剣な表情でうなづいていましたが、「でもコースで平坦なところはここ(スタート地点)だけなんだよね」。会場は爆笑に包まれました。
瀬古さんは5キロのレースに出場。芦ノ湖スカイラインの坂道に苦しみながらも上り坂になると「腕、腕、腕で走りましょう」と周りのランナーに声をかけ、抜かれる時には「どうぞ、どうぞ、お先にどうぞ」と。
帰りは一緒のクルマで東京まで。車中での話は故中村清監督との師弟関係について。「増田も(瀧田詔生先生に)管理されていたと思うけど、俺も大変だったよ」。瀬古さんは練習以外でも中村監督と同じ時間を共有することが多かったようです。唯一ひとりっきりになれるのがトイレの中だけ。でも内臓を悪くした時、監督が不意にトイレのドアを開け「うんちの具合はどうだ?」と。それには参ったそうです。
「今の選手にそんなことしたら皆辞めちゃうよ」と話します。一流の選手は一流の監督になれないとよく言われますが、瀬古さんはアテネ五輪に国近選手を送るなど着実に世界的なランナーを育てています。選手からも愛されるキャラクターなので、明るいムードの中でチームの今後の活躍が楽しみです。
(共同通信/2005年6月1日配信)
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