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おしゃべり散歩道2005

ホタルの季節

 湿り気のある風の中、ホタルが飛び交う季節です。先日千葉の実家(岬町)に帰ると、源氏ボタルが蓮田の水面をうっすら照らしていました。淡い光を放つホタルを眺めていると、ふと思い出す句があります。“命 ひとつ ふたつ みつ 蛍飛ぶ”写真家の浅井慎平さんの句です。東南アジアのかつての激戦地の洞窟で詠まれた句ですが、ホタルは“命”と重ね合わせられるのでしょう。私も見ていると切ない気持ちになります。
 そんな折、NHK教育テレビの番組に出演。5組の親子と一緒に考えるテーマは「いのちの大切さ」でした。長崎県教育委員会が県内の小4、小6、中2の3000人の子供たちを対象にしたアンケートの結果、死んだ人が生き返ると思っている子供が15.4%も。この驚くべき結果を受けて出演者の母親は「おじいちゃん、おばあちゃんの死を身近で感じることが少なくなったからでしょう」と。また、「テレビゲームの中で死んだキャラクターが生き返るような、現実とバーチャルの区別があいまいになっている」という声もあがりました。家庭でも学校でも“いのちの大切さ”を子供たちにどう伝えたらよいか努力しているようです。
 例えば子供がケンカの時に言う「死ね」という言葉の暴力を注意する母親。学校では出産したばかりの母親が教壇に立ち、出産について語る授業もあるようです。そんな話を聞きながら私はスポーツに携わる者として考えました。サッカー、野球、水泳、陸上・・・。どの種目でも自分をギリギリまで追い込めば、息苦しくなったり、筋肉が悲鳴をあげたり、嫌がおうにも生きている実感を味わいます。それは体が“命を確かめる時間”ではないでしょうか。
 子供のころからスポーツを通して自分の命を体感することは、心と体の健やかな成長に欠かせないことだと思うのです。

(共同通信/2005年6月22日配信)

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