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おしゃべり散歩道2005

口にふたして力をためる

 高校スポーツ夏の祭典、全国高等学校総合体育大会(高校総体)が今年は千葉で開催されます。その名も「2005千葉きらめき総体」と、元気な千葉らしい笑顔弾けるオレンジ色のポスターを目にします。
 「増田さんは千葉の星だから・・・」先日主催者から開会式後の講演を頼まれ、喜んでお引き受けしました。今回陸上競技が行われる天台競技場(千葉市)は高校生だった私の青春の舞台でした。23センチの足で初めて踏みしめたエンジ色のゴムのトラックの感触。ユニフォームやスパイクの汗の匂いが漂う更衣室。縁起を担いで使ったロッカーの位置まで鮮明に覚えています。今でもあの競技場に行くと緊張がよみがえり、空気が酸っぱく感じられるのです。
 また高校総体には面白くも苦い思い出があります。高校1年生の時、関東大会を勝ち抜いた私は、女子800mで高校総体に出場しました。関東大会の成績から、予選は軽く通過できるはずだったのですが、当時実家を離れ成田高校の瀧田詔生監督のお宅に下宿していた私。応援に駆けつけてくれた故郷・岬町の先生や友人と久しぶりに会い、ウォーミングアップが始まる寸前までおしゃべりに花が咲きました。ところがいざスタートすると体の力が抜けてしまったような感じで、トップ争いどころか、後ろのほうに取り残されてしまったのです。結果は予選落ち。ショックでした。成田への帰りの車の中、先生は私に言いました。「増田、おしゃべりは力を口から外に出す。本当に強くなりたかったら口に蓋をしなさい」。それから私は無口になりました。
 私に口に蓋をして力を貯めることを教えてくれた高校総体。千葉県人は明るい気質でホスピタリティ溢れています。観客の声援も選手の力になるに違いありません。今回出場する高校生の皆さんも、きっと自分の人生に大切な“何か”を得るはずです。

(共同通信/2005年7月13日配信)

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