海外転戦たくましさ
北海道マラソン後のフェアウェル(さよなら)パーティー。女子優勝者の千葉真子さん(豊田自動織機)は、光沢のある紫ピンクのワンピース姿で現れました。華奢な体が5歩動くたびに大変な人だかりが。千葉ちゃんは人気者なのです。壇上であいさつ。「去年は浴衣を着ましたが今年も同じだと芸がないと思ったのでワンピースにしました」一声発したその瞬間、会場は笑い声に包まれました。走る姿は凛とした大人の女性の雰囲気が漂うのに、声は高く明るい幼い感じ。そのギャップが魅力なのです。
それにしても何とたくましい選手なのでしょう。今回特に千葉さんが注目されていたのは、小出義雄さんのもとから2月に独立し、初めてのマラソン出場。一人でどこまで出来るか、その真価が問われたレースでした。その結果は30度近い暑さにもかかわらず、最初からハイペースで独走し、大会新記録で逃げ切ったのです。
パーティー会場で私は千葉さんに「一人で追い込む練習(インターバルトレーニングなど)は大変だったでしょ」と尋ねると、「全然追い込んでないんです。その分大会にたくさん参加して練習に代えています」という答えが返ってきました。海外でレースをするのが大好きな千葉さん。5月は毎週末のアメリカのレースを転戦しました。「世界のランナーたちに育ててもらっているんです」と話します。まるでケニアのヌデレバ選手のようなやり方です。海外の友人もたくさん増えたようです。このような環境を勇気ある挑戦で成し得て、そこで得たものを更に力にする、時代を拓くランナーだと思います。
お祝いのビールを注がれるはずの千葉さんがビール瓶を持って歩き出しました。以前の恩師、旭化成の宗猛さんを見つけたからです。千葉さんは男子の優勝者渡辺共則さん(旭化成)を祝った後、「宗さんから学んだ練習が、今すごく活かされています」と。すると宗さんは「いいとこだけを取って、自分流にアレンジしていってね」と。これもまた微笑ましい光景でした。
(共同通信/2005年8月31日配信)
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