一歩踏み出したQちゃん
アメリカ東海岸。ニューヨークの南、バージニア州で久しぶりにロックンロールハーフマラソンを走り終えたQちゃん(高橋尚子さん)。レース後に電話を入れました。ちょうど表彰式の前で「今からジャーニー(アメリカの有名ロックバンド)のコンサートを聴いてから表彰を受けるんですよ」と、彼女のその声はすごく弾んでいました。表彰式は海岸沿いで行われているとのこと。電話口ではすでにビートの効いた音楽が鳴り響き、走り終えたばかりのQちゃんがそのリズムに乗っているようでした。レース中にも13箇所のロックのステージがあって音楽好きの彼女にはたまらなかったそうです。
それにしても東京国際女子マラソンを2ヵ月半後に控えてのこの記録、2時間10分30秒は素晴らしい。今回は本番に向けて最後のスピード練習で走ったの、と私が聞くと「いいえ、ちょっと走ってみようかな、と急に決めたんです」と。何でも2週間前までウィンターパーク(彼女が暮らすコロラド州ボルダーの北部、標高3500m)で合宿をして、毎日平均60〜70kmを走っていたそうです。気楽なスピード練習のつもりで1週間前に参加を決めたのに、会場に着いたらたくさんの日本のマスコミ陣がいたのにびっくりしたとのこと。
Qちゃんが真剣にハーフを走ったのは5年ぶりです。感想を聞くと「3kmあたりで私、“すごいスピードで走ってる”と懐かしくなっちゃいました」と、一段と明るい声が返ってきました。そして更に「やめたいと思った時期もあったけど、やめなくてよかった。本当に走れてよかった」と続けたのです。こういうときに本音がでるのでしょう。私はこれまで彼女の口から“やめたい”という言葉を聞いたことがありませんでした。人には言えない葛藤を乗り越えての言葉に聞こえました。ロックのリズムの中で北京に向けて完全なる一歩を踏み出したのが、いかにもQちゃんらくていいなあ、と思います。
(共同通信/2005年9月5日配信)
|