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おしゃべり散歩道2005

壁に表情が見えた

 東京・足立区に隣接する埼玉県草加市で、先日草加市体育協会主催による「スポーツ講演会」が開かれました。私は講師としてお招きを受け、日曜日の朝9時に草加駅へ。講演会まで少し時間があったので、駅前のレストランで一休みしていると、柔道着を着た小学校4年生位の男の子がお母さんと一緒に入ってきました。顔にはうっすらと汗をかいていて、朝稽古の帰りなのでしょう。美味しそうにトーストを頬張る姿がすごく健康的に見えました。
 さて、講演会場の控え室。ここにも健やかな空気が。まずは松本厚会長がご挨拶に来て下さいましたが、ドアを開けて入ってくるその姿に無駄な動きはなく颯爽としていらしたのです。聞けば学生時代から今もなお剣道をなさっているとのこと。驚いたことにその後数名の体育協会の方が見えましたが、皆さん体に贅肉が少なくスマートな体型。何らかのスポーツに励み、それを子供たちにも教えているということでした。年齢を聞いてびっくりするほど若々しい皆さんでしたが、元小学校の校長先生が多かったのです。松本さんは「子供がスポーツを通じて学べることはすごく多い」と話します。そしてそれを親に理解してもらうために草加市では親子で参加する“親子教室”や“幼児教室”を指導員のもと開いているのです。
 講演会。ステージから見渡すと会場の前の方には体操着や野球のユニフォームを着た生徒が多くいました。端のほうに目をやると、何と朝見かけた柔道着を着た男の子がじっと私のほうを見つめていたのです。私は中学校の時に軟式テニスをやっていた話をしました。下手でなかなかコートで練習ができなかったこと。壁打ち練習に飽き先生に愚痴をこぼすと、「先生は“今は壁にテニスを教えてもらいなさい”と言ってくれて、おかげで壁に表情が見えるようになったんだよ」と話すと、柔道着を着た男の子はにっこり笑いながら頷いたのです。

(共同通信/2005年9月16日配信)

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