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おしゃべり散歩道2005

ずさんな大会運営に怒り

 澄み渡る空に天安門の瑠璃瓦が良く映えた秋の日(10月16日)。2005ANA北京国際マラソンが天安門広場からスタートして行われました。
 男子のレースでハプニングが。1位を独走していたケニアのベンソン・キプチュンバ・チェロノ選手(21歳)がコースを間違え、800m足りないままゴールインしてしまったのです。私は北京のスタジオで女子の解説をしながら、独走する彼の映像を横目で見ていました。40km地点では2時間9分台のゴール予想でしたが、彼のゴールシーンで突如6分台の時間表示が目に飛び込んできて、一瞬何が起こったか分からなかったのです。
 実は彼が中継車・先導車の後ろを付いて行き、沿道の審判員が誘導することもなく、ゴールのスタジアムに入る手前で走らなければいけない道を走れなかったのです。結局大会側はミスを認め、2分20秒をプラスして2時間9分15秒のタイムでチェロノ選手を優勝にしました。しかし記録は参考記録。彼は自己ベスト(2時間10分1秒)を更新したのに公認されないのです。
 本番のレースを前にコースの下見をすればいい、コースミスした本人が悪い、と考える人もいると思います。しかし、世界のほとんどの選手は下見や試走をしません。しかも35kmを過ぎると1秒でも早くゴールに入りたいと、思考はゴールの一点に集中されます。選手は体も心も極限の状態で走っているのです。ですから、選手に責任はなく、最後までコースを誘導しなかった運営側の大きなミスです。
 その夜、大会主催のパーティーの壇上にはチェロノ選手がいました。怒りをどこにぶつけたらいいのか分からない、やりきれない気持ちを隠し、笑顔で振る舞う彼。若い選手に代わって私が声を大にして言います。このようなミスが二度と起きないよう、すべての大会運営者は万全を尽くして欲しい。

(共同通信/2005年10月17日配信)

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