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おしゃべり散歩道2005

キラリ輝く、金丸ダンス

 「あなたがキラリ」がキャッチフレーズの「晴れの国おかやま国体」で、陸上競技初日から“キラリ”と輝いた選手がいました。少年男子A100mで優勝した金丸祐三選手(大阪高校)です。彼は高校生にして夏の日本選手権400mで優勝、世界陸上ヘルシンキ大会には1600mリレー日本代表で出場しました。すでに超大物ぶりを発揮していますが、この日は専門ではない100mでも圧倒的な強さを見せたのです。
 これまで私は映像を通して金丸選手のファンでした。強さもさることながらレース直前に行う“金丸ダンス”のお茶目な雰囲気が楽しかったからです。ですからおかやま国体では密着取材。彼の100mの予選、準決勝、決勝と3レースとも追いました。赤いユニフォームの彼は3回ともスタート前に両手を広げ、手首、首、腰をリズミカルにプラプラ。スタンドにはそんな彼の姿に微笑みながら息を飲み込む大勢の観客の姿がありました。優勝後、私は金丸選手に「あのダンスはリラックスのため?」と聞きました。すると彼は「体の力も抜けますが、“げんかつぎ”にもなっています。ヘルシンキでは(外国語の)アナウンスに慣れなくて、するタイミングを逃してしまいました。」低くて落ち着いた声と話し方。お茶目なダンスとのギャップがまた魅力です。大阪高校陸上部の岡本監督にお話を伺うと、「1年生の時から彼は違っていた。スケールが大きい。舞台が大きいほど結果を出すので、その頃から世界に目を向けなさいと言っていました」と。また優しい雰囲気の岡本監督は自分の手に負えないくらい才能があるので、これからは大学の指導者に任せたい、とおっしゃったのです。
 表彰台から降りて歩く金丸選手に私は改めて「おめでとう」と声をかけました。すると彼は丁寧に立ち止まって「ありがとうございます」と一礼したのです。礼儀正しく硬派、それでいてコミカルなダンス。“これはファンが増えるわ”と埋め尽くされたスタジアムを見てうれしくなりました。

(共同通信/2005年10月24日配信)

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