Qちゃんの復活に感動
まるで42.195km続く劇場のようでした。これまで私が移動車から中継したマラソンで、これほど沿道に切れ目ない人を見たことはありません。11月20日、東京国際女子マラソン。誰もがQちゃん(高橋尚子さん)を応援しようと集まったのです。
こんなに人を惹きつけるQちゃんの魅力とは何なのでしょう。中継を終えて自宅に帰ると、母からFAXが届いていました。「今朝、高橋尚子さんが良い結果を出せますようにと清水寺(千葉県岬町)にお参りに行きました。午後はうちの仏様にお線香をあげて祈っていました」。母がこんなことをするのは、娘の私が現役選手の時以来。母は結びの言葉に「本当に素晴らしかった、日本中が感動したと思います」と。同じようにQちゃんの復活を心から喜び、幸せな気持ちになった人がどれだけたくさんいることでしょう。
一言でQちゃんを語るとき、私は“まっすぐ”という言葉が真っ先に頭に浮かびます。目標に向かって努力するひたむきな姿、思考が明るくて前向きなところ、走ることを楽しんでいる姿・・・。それに自分のことでは泣かない彼女が涙を見せるのは、人への感謝の気持ちを話す時。今回も「チームQ」(練習パートナーの藤井博之さん、トレーナーの西村功さん、食事担当の佐藤直子さん)のことを話し始めると、「どん底の時から一緒に歩んでくれたんです」と涙ぐんでしまいました。「佐藤さんは5ヶ月間の合宿中1日たりとも同じメニューはなかったのです。朝起きるといつも台所に立って食事の準備をしてくれていました」。そんな佐藤さんにQちゃんのことを聞くと「練習がハードな時でも高橋さんは自分だけを見ているのではなく、周りを見てスタッフみんなに優しくしてくれました。同じ女性としてこんなに近くにいられることが幸せです」と。
Qちゃんのパワーの源は感謝力だと思います。支えてくれたチームのみんなはもちろんのこと、優勝インタビューでは恩師小出義雄さんへの感謝の言葉も忘れませんでした。
(共同通信/2005年11月21日配信)
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