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おしゃべり散歩道2005

スポーツが育むもの

 先日、仕事で訪れた愛媛県松山市。いちょう並木の紅葉が道を明るく照らし、その間を坊ちゃん列車が優しい表情で走っていました。仕事を終えて午後4時、夫と共に道後公園へジョギングに行くと、5、6人の子供たちが缶蹴りをして遊んでいる姿が。「今でも缶蹴りやるんだ」と私たちは懐かしい気持ちになり、しばらく眺めていたのです。その近くにはすべり台で歓声を上げながら遊ぶ幼児の姿も。お母さんたちが見守りながら近くの木の椅子に座りおしゃべりに花を咲かせていました。はぜや桜の木々が葉っぱの雪を降らせ、ほっぺに葉っぱを浴びながら元気に走り回る子供達の何と健やかな姿だったことでしょう。
 文部科学省中央教育審議会が子供達の“生きる力の育成を目指す教育”に3つの柱を掲げました。確かな学力、豊かな心、健やかな体です。「健やかな体」が加わったのは、世の中で起こる悲しい殺伐としたニュースを聞いていると“健やか”とは程遠い感じがする状況を憂いてのことだと思います。健やかな体を育むために、食生活の充実や自然体験、スポーツの必要性は言うまでもありません。
 ところで、夏に訪れたフィンランドは子供たちの学力水準が世界一の国です。現地の家庭にお邪魔して、その理由を探ってみました。さぞかし勉強していると思いきや、宿題がない、家庭教師はほとんどいない、塾は存在すらしないとのこと。一方で週末や長い夏休みは家族で過ごすことが多く、湖でボートを漕いだり、森の中を散策したりと、どっぷり自然に浸る生活をしているのです。お話を伺いながら自然体験や外遊び、スポーツが育むものは“体”だけではなく、情緒的、社会的、知的発達など、あらゆる機能を伸ばすのだと感じました。
松山の子供達の姿がそんな夏のことも思い出させてくれたのです。

(共同通信/2005年12月5日配信)

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