増田明美のホームページ ビデオメッセージへ各種お問い合わせへトップページへ

TOP > おしゃべり散歩道 > 2006年目次 > エッセイ第8回
プロフィール
おしゃべり散歩道
イベント情報
出演予定
執筆活動
リンク集

おしゃべり散歩道2006

大物感漂う高校生2人

 赤レンガ倉庫が雨に濡れ、レンガ色がより濃く港町に映えていました。2月26日、第24回横浜国際女子駅伝はここからスタート。日本ナショナルチームの1区は小林祐梨子さん、須磨学園高校2年生。そしてつないだタスキを胸にアンカーでゴールの赤レンガ倉庫に戻ってきたのが新谷仁美さん、興譲館高校3年生です。日本のナショナルチームに高校生が加わるのは珍しいことですが、二人の実力はすでに全日本レベル。
 大会のテーマも「次のヒロインは横浜から」とあり、2人の高校生は注目されていました。日本代表に加え、責任のある最初と最後の区間を任せられるというたいへんなプレッシャー。しかし、それを見事に払いのけての活躍に、大会は雨をも忘れる熱気に包まれました。日本はロシア、中国に続く3位。1区を走った小林さんは、3,000m室内世界記録を作ったばかりのロシアのショブホワさんらに引けを取らない走りで4位ながら堂々の区間新記録。そしてアンカーの新谷さんはヘルシンキ世界陸上10,000mロシア代表のサモフワロワさんらを抑えて区間賞を取りました。
 大物感漂う2人。性格が違うところもまた魅力です。小林さんは自ら「有言実行」を座右の銘とする選手ですが、普段も活発。目の奥から光を放ち、私が一つ質問すると十くらい返ってくるような選手です。一方の新谷さんはおっとりとしていて、素朴な雰囲気を持っています。大会前日の記者会見。当日誕生日の新谷さんに、ゴール後にどんなケーキが食べたいですかと質問が出ると、にっこりと首を傾げた後「食べ物だったらなんでもいいです」とゆっくり答え、場内は笑いに包まれました。それが練習に入るとキュっと切り替えて、一礼してグラウンドに入り、とことん自分を追い込むのです。オンとオフの切り替えが見事な選手。
 タイプの違う2人。陸上長距離界に吹き込んだ春の風を、赤レンガ倉庫が優しく見守っていました。

(共同通信/2006年2月27日配信)

次のエッセイを読む 【2006年の総合目次へ】 前のエッセイを読む


Copyright (C)2001-2021 Kiwaki-Office. All Rights Reserved.
サイト内の画像・文章等の転載・二次利用を禁じます。