メダリストらと陸上談義
4月1日2日と福岡・海の中道公園で開かれた世界クロスカントリー大会。エチオピアやケニアの選手達のバネのある伸びやかな走りに観客は沸きました。会場までの案内人はチューリップやすみれ、水仙など、花の小径。5年連続2冠(ショートとロング)を達成したケネニサ・ベケレも母国エチオピアにはない花々に目をやる姿が印象的でした。
私はアンバサダーとしてこの大会に参加。幸いなことに五輪や世界陸上のメダリスト達が表彰のために多数参加し、おかげで楽しい時間を過ごす事が出来ました。表彰の合間にお昼ごはんを食べに大きなテントの中へ。谷口浩美さん、有森裕子さん、森下広一さん、佐藤信之さん、浅利純子さん、市橋有里さんが一緒でした。こうしてみんなで会うのは初めて。皆嬉しさに話しは尽きませんでした。
そして、考え方も千差万別です。例えば、現在活躍する選手達のレース後のインタビューについて。受け狙いのユーモアあるコメントに対して私が「あれも個性があっていいよね」と話すと、有森さんは「もう少しきちんと受け答えできるように指導したほうがいいですよ」と。谷口さんも「僕もそう思う。勝った人は競技以外でも見本とならなければいけない」と厳しい。また来年に迫った北京五輪のマラソンの代表選考会について。「五輪の選考会に世界陸上があるのはおかしい。共に大きな世界大会なので、別々の目標になるべきです」(大阪世界陸上で日本人トップかつメダル獲得ならば北京五輪代表になる)と有森さん。「代表選手が3人で選考レースが4つなのは変ですね」と浅利さん。静かに頷きながら聞いていた市橋さんが急に目に涙を浮かべました。きっとシドニー五輪の選考で辛い思いをしたことを思い出したのでしょう。隣で谷口さんが「選手に辛い思いをさせてはいけない」と。皆が本音で語り合えた春の1日でした。
(共同通信/2006年4月10日配信)
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