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おしゃべり散歩道2006

“普通”の中に宝物発見

 紫陽花あかりに包まれた6月上旬、呼びかけ人代表黛まどかさんが指揮する“日本再発見塾”が琵琶湖の西岸・滋賀県高島市で開かれました。2日間の日程の1日目に私は講師として参加。心の鈴の音が鳴るような、豊かな時間を過ごすことが出来たのです。
 日本再発見塾とは各地に残る“いいもの(人、物、技、文化)”に触れながら、地元の人と講師、参加者が語り合う。日本を学び、日本に遊び、日本の良さを再発見していこうというものです。およそ30人の実行委員が大学生であることも魅力の一つです。
 さて高島市は、歴史の表舞台であった京都、奈良に対し、楽屋裏といわれた地域だそうです。昼食後、針江地区で150人の参加者は黛さんの吟行会と私のジョギングの2班に分かれました。私たちジョギング組は黒い板張りの家々が並ぶ道を抜け、れんげ畑や田んぼの脇を通り、葦の茂る船着場で休憩。それから琵琶湖まで走り、折り返しました。途中地元の幼稚園児が十数名、田んぼの脇に並んで声援。「一緒に走ろうよ」と私が声を掛けると、ためらう素振りも見せずに、にっこり笑って駆け出しました。その勢いのすごいこと。体をいっぱいに広げて、田んぼに落ちてしまいそうなくらいの元気の良さです。
 ジョギングの後は黛さんたちと合流し、正傳寺で“究極の普通”というテーマでディスカッション。日常の“普通”の中にいっぱい宝物があることを再発見しようというもの。針江地区の家々に残る川端(かばた・水路沿いの敷地内に湧く水を生活に利用する場所)もそのひとつです。地元の方が「水路の上流に住む人は下流の人を思いやり、下流の人は上流の人を信じて生活しています」話すの聞き、私は“普通”が保たれるのはその土地に住む人々の品格なのだと気づきました。
 そして私が感じた“普通”は子供達。田んぼの脇を元気いっぱい走る姿は、最近なかなか見かけなくなった子供達の“普通”の素敵さだったのです。

(共同通信/2006年6月5日配信)

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